1審津地裁判決は、警官の制圧行為の違法性は認定した。しかし、死亡した男性が居合わせた女性に「泥棒」と叫ばれたり、他の客に取り押さえられた際のストレスと、警官の制圧によるストレスを同程度とし、「どちらの行為で死亡したか分からない」として因果関係は不明としていた。
2審判決は警官の制圧について1審同様「胸や腹に強い力がかかり約20分続いた」と認定。客の取り押さえ時間を1審より2分長い5分とした上で、「(体重94キロの)警官に制圧されたストレスの方がはるかに大きかった」とした。
男性の遺族の代理人弁護士は「主張はほぼ認められた。県は上告せず遺族に陳謝し、再発防止に努めてほしい」と話した。男性の妻(71)は「事件の真相を明らかにして夫の名誉を回復するという妻の責務を果たし、夫も少しは安堵(あんど)しているのではないか」との談話を発表した。
県警警務部・浜口昇首席監察官は「今後の対応については判決内容を検討した上で決めたい」とコメントした。
男性の窃盗未遂容疑については、津地検が「無実」と認定し、遺族に1万2500円の補償金を支払っている。
判決などによると、男性は04年2月17日、四日市市尾平町のスーパー「イオン四日市尾平店」の現金自動受払機(ATM)で現金を引き出そうとした際、後ろから来た女性に「泥棒」と叫ばれ、近くにいた客らに取り押さえられた。四日市南署員2人のうち1人が約20分馬乗りになって男性を制圧。男性は嘔吐(おうと)して意識を失い、ストレスを原因とする高血圧性心不全で翌日死亡した。【山口知、岡大介】